28歳で夭折した山中貞雄監督作品。
これはもう日本映画史に残る大傑作という
評価が定着している逸品ですね。
徹底的にデフォルメして
全編爆笑の喜劇仕立てにしたという
ある種アバンギャルドな作品。
ストーリーもよく工夫されているのですが
面白いのは男女~夫婦の描き方。
大河内傳次郎/喜代三
沢村国太郎/花井蘭子
という二組が出てくるのですが
大河内は居候、沢村は婿養子の立場で
始終女性の眼を気にしていて
落ち着きがありません。
身分や境遇の違いはあれど
圧倒的に女性上位なわけです。
(お屋敷と長屋の対比が冴えています)
喜代三にぶつぶつ文句を言う大河内ですが
どんと構える相手に
眼をキョロキョロさせるばかりで
強く出ることができません。
(大河内の細かい仕草が絶品)
山中監督の特徴である
左右方向ではなく
画面の手前↔奥での人物配置&移動シーンも
堪能できますね。
喜代三や花井蘭子、
沢村が惚れてしまう若い女(深水藤子)にも
セリフがしっかりと与えられていて
それぞれに見せ場があります。
男優のチャンバラシーンがとかく
クローズアップされる時代劇としては
極めて男女間のバランスが考慮されていますね。
(勿論、大河内の切れの良い動きも楽しめます)
撮影時(1935年)にはなんと25歳だった山中監督。
天才、という言葉は
こういう人のためにあるのでしょうね・・・