バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

郷愁のラムカムヘン

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今から十数年前、バンコク市内の

ラムカムヘンというエリアに住んでいたことがあります。

 

スカイトレインや地下鉄の路線から外れていましたので

都心部への行き来はバスかタクシーのみ。

(運河を走るボートというのもありましたが)

これがもう激混みで

雨が降ると2時間近くかかることもありましたっけ。

 

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郊外地域ですから、高層の建物がまばら。

 

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ベランダで涼みながらの読書も快適でしたね。

 

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近所に大学が2つあるので、学生さんが多かったですね。

東京でいうと高田馬場(を自然豊かな環境にしたような)

にちょっと似てるかな。

 

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マンションの敷地もゆったりしていて

子供たちが楽しそうに遊んでましたねえ。

 

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歩いてすぐのところにあった食堂。

ここ、美味しかったんですよ。

出前もしてくれたし。

 

まもなく新路線が開通するようですから

アクセスはグンと良くなるでしょうね。

 

その前に、バスを使って

久しぶりに再訪してみましょうかね。

きっと様変わりしてるだろうなあ・・・

 

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土曜の夜にはフィーバーしなかったけれど・・・ビージーズの最良アルバム ”メイン・コース”

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BEE GEES~ビージーズ

オーストラリア出身のグループで

60年代から活動していましたが、

1977年から1980年くらいまでの数年間

そりゃー、もう凄かったんですよ。

 

彼等自身のシングル曲がですね、ずっとチャートの一位なんですよ。

プラス他アーティストへの提供曲とか共演作品、

関連ナンバーもドカンドカンとチャート上位にランクインしてくるという。

もう尋常ではないレベルでしたねえ・・・

 

私はこのグループの大ファンというわけではないので

偉そうなことは言えないんですが、

内容的にはね、そのフィーバー状態のちょい前

1975年に発表された

”メイン・コース” というアルバムが

際立っているのではないかと。

 

Nights On Broadway

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ロック、してるんですよね。

ボーカルもサウンドも力強い。

 

これより以前は

スーパーセンチメンタル路線で

正直、ちょっと弱いんですね。

 

ナイトフィーバー以降はディスコ一辺倒で、

(きれいなメロディーの曲も多いんですが)

金太郎飴状態になってしまうんです。

 

このアルバムは楽曲の出来が良いですし

プロデューサーが名匠アリフ・マーディンなんですね。

ストリングスやブラスのアレンジが冴えているのも

大きな魅力です。

 

Wind Of Change

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トレードマークの裏声に加えて

地声の歌唱パートも多いんですよね。

それもひ弱さの払拭に繋がっているかと。

 

当時、この作品はアナログ(LP)で買いましたね。

個人的にビージーズの曲で一番気に入っているナンバーが

収録されていましたし。

 

Fanny (Be Tender With My Love)

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これは名曲ですよ。

同じくアリフがプロデュースした

ホール&オーツの ”She's Gone"(1973年)

を思わせる曲調ですが(アレンジもほぼ同じ・・・)

良いものは良いということで。

 

She's Gone    Hall and Oates

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(こちらのほうがボーカル&演奏とも上手いなあ・・・)

ベルイマン再び~女は、別の女のなかに自分を発見する ”仮面/ペルソナ”

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昨日に引き続いてベルイマンの作品を。

 

これはもう、女VS女

の関係性をグッと追及した

非常に濃密な84分間であります。

 

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冒頭、男の子がベッドに虚ろな表情で横たわっています。

 

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大写しになったスクリーンに女性の顔が浮かびあがりますが

ぼやけています。

 

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場面変わって、病室に二人の女。

人気のある舞台女優(リヴ・ウルマン)、突然に声が出なくなり

入院しています。

献身的にケアする看護師にビビ・アンデショーン。

 

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療養のために海辺のコテージにやってきた二人。

親密さが増していきます。

 

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寝室は別なのですが、一緒に寝ているシーンもありますし

患者と看護師の関係を超えた

セクシュアルな結びつきになっていることが示唆されています。

 

或る晩、ビビは過去の体験(こちらも性的な事柄)を

赤裸々にウルマンに告白します。

今でも自分のトラウマになっていると。

 

ところがウルマンはその内容を手紙に書いて

病院の医師に知らせようとします。

 

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激怒するビビ

「あなたのことを尊敬していたし、信頼してもいたからこそ自分の秘密を話したのに」

 

以降、二人の関係は愛憎相半ばする

キリモミ状態に。

ベルイマンがもっとも得意とする展開ですね)

 

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途中、ウルマンの体調を心配して

夫がコテージにやってくるのですが

ビビのことを ”妻” と呼びます。

 

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そして、二人はそのまま深い関係に・・・

(ウルマンにも家庭に関する悩みがあって、冒頭に出てきた男の子のシーンはウルマンと子供の関係性が破綻していることを表しているのでしょう)

 

最終的に二人は別々にコテージを出ていきます。

「ウルマンの治療」と「ビビの看護」は

普段は固く閉ざしている心の奥底を

相手の心中に見つけることで、終了したということでしょうね。

 

(ビビは私服を脱いで制服に着替え、バスに乗り込みます。またほんの一瞬ですがウルマンがカメラに向かって演技をしているショットが挟み込まれます。声を取り戻して女優業に復帰したのでしょう)

 

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ラスト、再び男の子がスクリーンに映る

女性の顔を触ろうとするのですが

その表情は霞んだままです。

 

ですので単なるハッピー・エンドではないのですが・・・

 

昨日の ”狼の時刻”と対になっている作品でもありますので

続けて観てみるのも一興かと。

(コーヒー10杯、または度数の強いアルコールが必須かも)

 

Persona    Trailer

www.youtube.com

 

難解?哲学的?それともホラー? 男の性的欲望の爆発と崩壊のお話でしょう・・・ベルイマンの ”狼の時刻”

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イングマール・ベルイマンの1968年作品

”狼の時刻~Vargtimmen”

 

日本では劇場未公開だったようで、ベルイマンの作品としては

あまり知名度は高くないかもしれませんね。

 

冒頭からして変わったスタート。

小屋から一人の女(リヴ・ウルマン)が出てきて、テーブルに座ります。

「主人が行方不明になってしまって・・・」

とカメラに向かって話し始めます。

 

この時、画面の外からは ”用意いいですか?静かにして・・はい、それではスタート!”

と撮影チームらしき音声が入っています。

 

妻の記憶をもとにして、夫がいかにして消えてしまったかを

再現フィルムにして、これからお見せしましょう

というイントロになっているわけですね。

 

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この北海の島に二人でやってきた数年前は

夫(マックス・フォン・シドー)は妻に優しかったのですね。

愛する妻の絵を描く毎日。

(夫は画家という設定です)

 

ところが妻が妊娠してから、夫の態度がよそよそしくなっていきます。

(撮影当時、ウルマンは実際にベルイマンの子供を身籠っていました)

 

どうしたのかしら、うちの旦那・・・

 

夫が書き溜めている日記を留守中に読んでみると

 

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そこには様々な夫の過去や幻想が綴られているではありませんか。

それも尋常な内容ではなくて、

 

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海岸で絵を描いていると一人の女がやってきて

いきなり服を脱ぎ始めたり

 

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釣りをしていると、裸体の男の子が

これまた傍に寄ってきます。

 

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明らかにセクシャルな描写になっています。

 

この後、夫は少年に対して異常なまでの暴力をふるうのですが

別のシーンでも、感情が爆発して

いきなり他人(こちらでは大人)に殴りかかったりします。

 

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うちの旦那、まずいわ

どうしよう

どうしたらいいのかしら・・・

 

夫の錯乱状態は頂点に達し

 

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親子ほど齢の離れた老婆の足を舐め、抱き合ったり

 

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遂には自身の顔にメイクを施してもらうのですが

 

 

もう、精神は崩壊していく一方になってしまうのです。

 

つまり、この男は

性的願望に満ち満ちていたんですね。

若い女も好き、同性愛(少年愛)の傾向もあり、年上のマダムも好き

しかしそれをグッと抑え込んでいたわけです。

絵を描くこともその代償行為なのでしょう。

 

そして奥さんが妊娠したことにより、

性的欲求を満たす対象が無くなってしまったんですね。

もう欲望爆発、自身のジェンダーも崩壊

うわー、もう俺は我慢できない、やってられない

 

その結果が行方不明、かと。

(プライベートなパートナーでもあるウルマンが妊娠していたわけですから、監督の心のうちが表現されているとも取れますよね)

 

謎めいた怪しいシーンや登場人物が出てきますので

色々な解釈が出来るかと思うのですが

それらはあくまで 再現フィルム内の ”出来事” だと思うんですね。

ホラー的な雰囲気も強いんですけれど、これはホラーではないでしょう。

 

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映画の最期、ウルマンは諦めたように呟きます。

 

「私は夫が抱えている悩みについて、私なりに共有してみようと努力したんです。それが間違っていたのかしら・・・」

 

ベルイマンの追及テーマは

魂の「不安」と「救済」だと思うのですが

作品によって、その関係性が

人間と神(宗教)だったり

親↔子供、

女性↔女性の場合も多いですね。

 

本作は、その男↔女バージョンではないだろうかと。

 

きっと100人の人が観たら100通りの解釈が出てきそうですね。

天国のベルイマン、さぞやニヤニヤしていることでしょう。

 

Vargtimmen   Trailer

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もっさりしていてあか抜けない・・・しかし日本の大女優、田中絹代

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昭和の時代の大スター

上原謙

加山雄三のお父さん)

 

生前の著作 ”がんばってます” には

共演した数多くの女優のエピソードが書かれているのですが

ちょっと驚くのは、”愛染かつら”などで圧倒的人気のあった

田中絹代について、ボロクソに述べている箇所があるところです。

 

”私は田中絹代さんを好きになれなかった”

”こちらがすすんで話をもちかけても彼女の反応はつまらないし、彼女自身の話も、私には面白いとは思えなかった”

”彼女と芝居をやっているときも、ちっともうまいとは感じない”

”長いセリフになると、まともに喋れなくなってしまう。彼女の舌っ足らずの物言いに私は辟易した”

 

他の女優さんについては概ね、ロマンスなども絡めて

愛情豊かに記述しているので

その落差にびっくり。

よっぽど相性が悪かったのでしょうね。

 

確かに見た目的にも

絹代は決して目立つような美しさが無く

小柄かつスタイルもよろしくはありません。

 

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非常線の女

 

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”還ってきた男”

 

ですんで洋服姿が似合わないし

他の女優さんのほうが上背があるんですね。

 

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ハリウッド映画に出ても違和感が無さそうな水久保澄子

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小顔&モデルのような体形の高杉早苗

 

華やかな魅力に溢れた女優さんは他にいくらでも居るわけで。

 

しかし絹代には着物姿という圧倒的な武器があったのでした。

 

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”銀座化粧”

 

和服には絹代の持つ欠点をすべて長所に変える

魔法の効果があったわけです。

着物は八頭身美人よりも、ずん胴タイプにこそ

おあつらえですし。

 

洋装で動きの激しい場面では

絹代の滑舌の悪さが目立ってしまうのですが、

着物でならその心配も無し。

 

かくして、若さの峠を越えた戦後にも

小津や成瀬作品で

いぶし銀の魅力を発揮することが出来たのでした。

 

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”おかあさん”

 

上原謙

 

”不思議なことに、芝居では決してうまいと思えなくても、出来上がったのを見ると彼女は実にうまい。これにはびっくりした”

 

と絹代の女優としての魅力を見直しています。

 

昭和の時代だからこそ生まれた

昭和の時代だからこそ愛された

そして昭和の時代に紛れもなく必要だった

国民的スター、とでも形容したら

少しはあたっているでしょうか・・・

 

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「小説 田中絹代新藤兼人著/新潮文庫

ちょっとした市内の移動で2時間! バンコクに電車が無かった頃

 

今でこそ、バンコクには

スカイトレインやら地下鉄やらエアポートリンクとか

様々な電車網がありますけれど

そういうの、一切無かったんですよ。

以前はね。

 

じゃー、どうやって移動するんだというと

バスなんですね。

今でもまだ現役ですけど

昔はね、確か300路線くらいあったんじゃないかなあ。

 

 

しかも冷房の有無

高速に乗り入れる/一般道のみ

往路復路で途中のルートが異なる

とかね、複雑怪奇の世界。

 

 

地元のバンコクっ子に聞いてもね

自分の普段使う路線以外については

?なんですよ。

私も乗車してから、”あらー、間違えた” なんてこと

よくありましたね。

 

 

しかも、道路は常時

超渋滞。

歩いたほうが早いんじゃないかという。

冷房の無いタイプですとね、もうサウナ状態ですよ。

 

 

だからバイクは重宝しますね。

すり抜けが出来ますから。

 

 

乗り合いトラック(色々なタイプあり)が走行している通りもありますね。

 

 

今から三十年くらい前ですかね、電車路線の建設が始まったのは。

 

 

工事中は、更に路上が激混みになってしまうんですね。

 

 

ま、完成したら

今度はホームや電車内が混むわけですが。

大都会の宿命ですよね。

 

いっそのこと

田舎に行きますか?

(タイの人で、都会暮らしを嫌って郊外や地方に行く人は多いですよ)

 

 

やはり、貴方は凄かった・・・”バスター・キートン物語”(1957年)

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”The Buster Keaton Story”

 

かの喜劇王バスター・キートンの半生を

これまた名優のドナルド・オコーナーが演じる

伝記映画です。(監督/シドニー・シェルダン

 

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製作時にはバスター本人も健在で

(ほとんど引退状態でしたが)

アドバイザーとしてクレジットされています。

 

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往年の名場面が、芸達者のドナルドによって

再現されているのが見どころ。

私生活のロマンス&トラブルについての描写も多く、

人間ドラマとして観ることも出来ますね。

 

The Buster Keaton Story   Scene Comparisons

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それにしても、思い起こされるのが

キートンの残した作品の凄み。

単に体を張っているというレベルではなく

まさに一歩間違えば命を落としてしまう危険度です。

 

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今の、というか他の役者さんなら

絶対に自分ではやらない(&やらせられない)でしょう。

キートンの凄いところは、単に演じているだけでなく

全てのアイデア出しに加え、監督も自ら行っていること。

神技以外のなにものでもありません。

 

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そういう天才性は、チャップリンと共通していますね。

 

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(若き日のキートンチャップリンの2ショット)

 

しかし、サイレントからトーキーの時代に移行すると

キートンの人気は薄れていきます。

無表情~ポーカーフェイスがトレードマークだったキートンにとって、

セリフを喋ることによって笑わせるというのは

本質的に向いていませんから・・・

 

次第に脇役に回されることが多くなり、

私生活ではアルコールが手放せなくなります。

若干のリバイバルブームなどもあったのですが

その晩年は決して、華やかなものではありませんでした。

 

キートンは1966年2月に世を去りますが、

その数か月前に発表された ”The Railrodder”

という短編映画があります。

 

カナダ製作で僅か25分の短さ(監督/ジェラルド・ポッタートン)

そこには全盛期とは比ぶべくもない

キートンの姿が映し出されています。

 

The Railrodder

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しかし、これは素敵なんですよ。

老醜を晒すという、

そしてそれを観てしまうという

無残さはありません。

 

全てを胸の内にしまった

穏やかな表情のキートンがそこに居ますから。

 

この作品にはセリフが一つもありません。

サイレント映画

なんですね。

余計なダジャレを言わなくていいわけです、キートンは。

そして相変わらず、身体を張っています。

かなり危ない場面を自らがこなしています。

 

バスター、あなたは真に偉大な

コメディアンでした。

 

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