バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

もはや映画ではなくてデザイン帖~小津安二郎の "お早よう”

 

小津監督の1959年作品。

原節子の ”紀子三部シリーズ” などと比べると

地味な存在で

あまり話題に上ることもありませんね。

 

他作品では脇にまわる

沢村貞子、高橋とよ、長岡輝子、三好栄子らがメインになっていて

ある種のスピンオフなんですね。

なので華が無いといえば

まさにその通りなんですが

これは実にアバンギャルドな映画とも言えますね。

 

 

もう冒頭の構図からし

凝りに凝ったアングルになっております。

 

 

隣近所(五軒)の他愛無い噂話と

子供たちの拗ね具合が描かれているんですが

はっきり言ってまったく

どうでもいいトピックの連続です。

 

で、実際の観どころは

色彩と柄

なんですよ。

 

 

登場人物の服装や家の調度品

これらが

縞模様か格子柄なんですね。

 

カーテンとか障子、襖、座布団

もう徹頭徹尾。

 

 

一軒だけなら

まあ、その家の好みなのかな

ということなんですが

 

 

どこの家庭の室内も全部そうなんですよ。

当時日本で流行していたというわけではないので

 

 

これ、全部

小津監督好みの

デザインブックになってるんですね。

(だからストーリーもあってなきが如し&配役も目立つ俳優さんを前面に立ててないんでしょうね)

 

 

このシーンなんか

もう眩暈がしますよね。

横方向のラインが幾重にも積み重なってるでしょ。

 

もともと小津監督は

自身の好む着物や小物を

全面的に映像のなかに入れ込んできますけれど

この作品はちょっと偏執狂的な域になってますね。

 

昭和の良き日々の

ほのぼのホームドラマ

とんでもない

超カルトムービーですよ、実は。

 

*監督がアクセントカラーで使う赤のフラフープ、冒頭の俯瞰シーンでも置かれてますね(画像2枚目。街灯も円形の造作になっています)

 

エッセイスト中野翠

”小津ごのみ” (筑摩書房)は

小津作品に登場するファッションやインテリアの特徴を取り上げた

好著なんですが、

 

 

とかく男性的な視点から捉えられることの多い

小津映画の関連本のなかでも

着想がユニークな必読本。

小津ファンの方ならどうぞご一読を。

 

お早よう  予告編

www.youtube.com