バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

田中?山田?溝口?衣笠?~そんなもんじゃないのよ、私須磨子と島村の恋は

 

今でいうマルチタレントの先駆け

松井須磨子(1886~1919年)と

劇作家、演出家の島村抱月(1871~1918年)の

短くもドラマチックな一生は

よく知られているところ。

 

後年、

数々の映像作品や舞台、書籍で取り上げられていますが

極めつけが戦後間もない

1947年に公開された2本の映画。

 

 

”女優” は監督に衣笠貞之助、主演に山田五十鈴

東宝製作ですので当時の黒澤明作品に出演している

俳優陣が揃い踏み。

 

 

ちょっと珍しい

山田五十鈴のバレエコスチューム

 

 

抱月が病死してからの

魂の抜け殻状態の須磨子を

さすがに上手く演じています。

 

 

松竹版は溝口健二田中絹代の名コンビによる

”女優須磨子の恋”

 

 

こういう出で立ちは

田中絹代には正直似合わないですね。

 

 

和装になると

見違えるほどしっくり。

 

さて題材がまったく同一

&公開時期も重なっていたので

嫌でも比較対照されるわけですが

 

 

”女優” はキネマ旬報

第5位にランクされましたので

一般的にはこちらのほうが有名。

 

 

しかし溝口監督の弟子筋だった

新藤兼人の著作によると

田中作品のほうが上のようなニュアンスですね。

 

でも卒直に言ってしまうと

どちらも傑作、というレベルではありませんね。

 

山田五十鈴には ”浪華悲歌” ”蜘蛛巣城

田中絹代には ”西鶴一代女” ”雨月物語

 

衣笠貞之助には ”狂った一頁” ”十字路”

溝口健二には ”祇園の姉妹” ”近松物語”

 

などなど

女優、監督それぞれに

数段完成度の高い作品がいくらでもありますので。

 

 

なにより

松井須磨子本人の存在感が

あまりに圧倒的で

日本を代表する監督や女優が束になっても

敵わないのですよね・・・

 

(映画の作られた年には山田五十鈴は30歳、田中絹代は30代後半になっていて、年齢的~特に若い頃の須磨子を演じるのがそもそも無理目)

 

 

松井須磨子にはレコードに吹き込んだ

ヒット曲が幾つか残されていますが

”ゴンドラの唄” は

黒澤監督の ”生きる”(1952年)で

効果的に使われていましたね。

 

”ゴンドラの唄” 松井須磨子志村喬

www.youtube.com

 

(作詞/吉井勇、作曲/中山晋平

 

参考図書

映画検定 公式テキストブック」キネマ旬報映画総合研究所編・キネマ旬報社

「小説 田中絹代新藤兼人著・文春文庫