バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

ドイツ表現主義などと言われるから構えてしまうが、ごく普通の映画 ”蠱惑の街”

 

ドイツ表現主義

 

ドイツにおいて第一次世界大戦前に始まり1920年代に最盛となった芸術運動で、客観的表現を排して内面の主観的な表現に主眼をおくことを特徴とした。

 

なんだそうです。

ウィキペディアによると。

なんか難しそうっすよね

癖もありそうだし。

 

ちょっと一本観てみましょうか。

1923年に作られた

"THE STREET~蠱惑(こわく)の街”(監督/カール・グルーネ)

という作品です。

 

中年の男がですね。

奥さんがちゃんと居て

毎日食事も作ってくれるんですが

代り映えのしない毎日に飽きちゃうんですね。

 

あ~

なんか刺激が欲しいなあ

部屋に居てもつまらないから

よし、今夜は街に出てとことん遊んでやれ!

と、飛び出しちゃうんですね。

心配する奥さんを残して。

 

 

で、

確かに外の世界はエキサイティングなわけです。

ダンスホールは盛り上がってるし

 

 

魅力的な女性はあちこちに居るし

 

 

しかもなぜか

モテちゃったりして

 

 

トランプ賭博をやったら

思いの外

勝っちゃったりして

 

しかしそうは問屋が卸さないわけで

殺人事件の犯人にされそうになるんですね。

警察に連れていかれて。

あ~もうダメだ、俺の人生も終わりだ

 

最終的にはなんとか濡れ衣が晴れて

無罪放免。

 

這う這うの体で明け方に部屋に戻ります。

奥さん、怒ってるだろうなあ・・・

 

 

でも大丈夫

優しい奥さんは

黙っていつものように料理を出してくれて

男の後悔と懺悔を暖かく受け入れてくれるのでした。

 

・・・というわけで

極めてごくごくまっとうなストーリー展開。

別にドイツでなくとも

表現主義云々でなくとも

いいんじゃないですかい?

 

 

まあ、ところどころ

街灯が目ん玉になっていたり

女の顔が骸骨に変わるとかの

シーンもあるんですが

ワンポイント的な出し方に留まっていて

特にその部分が目立つわけではなく。

 

普通じゃん?

 

なんですよね、観終わってみると。

 

これ、原因は

カリガリ博士” とか "ノスフェラトゥ” といった

表現主義の代表作に必ず挙げられる作品のせいなんですよね。

 

それらはホラー色が強いんですね。

吸血鬼とか眠り男とか。

猟奇的な描写も多いし

セットデザインとかもアヴァンギャルド路線爆発。

 

(普通は)先にそちらを観ているので

イメージが固定しちゃってるんですよ。

ドイツ表現主義の映画とは

かくかくしかじか

そういうものなんだろうと。

 

 

さて

「この時代のドイツ映画は、やっぱりギラギラ系統に限る!」

ということでしたら、

本作と同じ年に作られた “ゲニーネ” のほうが何倍も強烈です。

(スタッフが ”カリガリ博士” と同じメンツ)

 

男を虜にする魔性の女を熱演しているのが

フェルン・アンドラという女優さんなんですが、

 

 

お父さんがサーカス芸人だった影響で

小さい頃から綱渡りを得意技として

ヨーロッパ各国を巡業してたんですね。

 

この人は才人で

そのうち自分で監督も兼任するようになって

 

 

そのうちの何本かでは

昔取った杵柄で

サーカスシーンが登場します。

 

「男を誘惑する芝居なんて綱渡りの100倍簡単よ、だいいち安全じゃないの」

 

などと思っていたでしょうね・・・

 

scene from  "Genuine: A Tale of a Vampire"

www.youtube.com