バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

”添え物”映画としては最高レベルの充実作~"HOLD BACK TOMORROW"

 

お~

これはとても良い映画ですよ。

まったく有名ではないけれど。

典型的な低予算ムービーですが

役者さんの演技や脚本が

非常にしっかりしてる。

 

 

人生に絶望した一人の女性(クレオ・ムーア)

入水自殺を試みますが

一命を取り留めます。

 

 

ずぶ濡れのまま、アパートの自室へ。

しかし明日には部屋を引き払わなくてはなりません。

僅かな食べ物さえ無し。

割れたグラスを見つめ、再び自死を考えます。

 

 

一方こちらは死刑囚のジョン・エイガー

翌日の執行を控え、最後の望みを尋ねられます。

 

「そうだな、女を呼んでくれ。この世の終わりのひと時をふざけて過ごすんだ」

 

 

警察に声をかけられたクレア

多少の報奨金が出ると聞かされ

「それを私の葬式代にしてもらおう」

と考え、恐る恐るジョンの独房内へ。

 

 

最初はぎこちない二人でしたが

どちらともなく今までの半生を振り返ります。

 

獣のような男たちを嫌というほど見てきたクレア

DVに苦しめられ、挙句友人に裏切られ

殺人を犯してしまったジョン。

 

ジョンはクレアに

「それでも俺は一度も泣いたことはない。人に弱味を見せるのは嫌なんだ。だから笑って死んでやる」

 

 

そんなジョンを

「時には泣くこともいいものよ。私は自分の涙に救われてきたの。あなたもそうしてみたら? ここには私たちしかいないから、遠慮や気兼ねは不要だもの」

 

クレオの言葉に初めて

他人に対する鎧を外したジョン。

安らぎの気持ちに包まれます。

 

 

しかし執行の時が。

やってきた牧師にジョンが思いもかけないリクエストを。

「今、この女性と結婚式を挙げたい。お願いできますか?」

 

戸惑う牧師でしたが、関係者の配慮でGOサインが。

「あなた達は生涯、伴侶を愛することを誓いますか?」

 

 

「ええ、一生」

 

 

一瞬、固く抱き合った後

ジョンは一人で刑場へ。

独房に残されたクレアは

それを見つめるのみ・・・

 

主演の二人はB級作品への出演が多く

決して大スターというわけではないのですが

本作での演技はベスト・オブ・ベスト。

独房内でのシーンはセリフ数も多く

役者としての実力が試されるところですが

充分にその期待に応えています。

 

「刑務所に女を呼ぶ? それで結婚式を挙げる? そんなのリアリティーないじゃん!」

という気もしますが、

この映画の舞台は架空の国という設定になっているので

(英語が使われていて、キリスト教圏)

そういう批判をうまくかわしているのも

上手い処理ですね(監督/ヒューゴ・ハス)

 

 

脚本も監督が書いていて

差し入れのスープを食べたクレアが

「玉ねぎがいっぱい入っているから、口が臭くなっちゃうわ」

と言うと

「まあ明日になったら匂いも取れているだろう」

とジョンがブラックジョークで返すシーンなど

やり取りの妙も楽しめます。

 

70分ちょいの小品ですけれど

下手な大作や話題作の

10倍いいですよ!

 

"Hold Back Tomorrow' (1955)    Trailer

www.youtube.com