ジャン=リュック・ゴダールのあまりの傑作
”女と男のいる舗道”
(邦題もなんと素晴らしい!)
それこそ天文学的に語られてきていると思いますので
ちょっと視点を変えて、登場人物の背後に映っているものについて
観ていこうかと。
この映画が公開されたのは1962年。
若き日のポール・アンカが微笑みかけています。
ビートルズの ”LOVE ME DO” がリリースされたのと
ほぼ同時期くらいでしょうか。
まさに時代の変わり目だったわけですね。
ナナ(アンナ・カリーナ)が勤めているレコードショップに
「ジュディ・ガーランドのアルバムはあるか?」と
尋ねてくるお客が来店します。
当時、ジュディは映画からは遠ざかっていましたが
ステージでのワンマンショーが人気を呼んでいて
その実況録音盤(JUDY AT CARNEGIE HALL)が大ヒットしていました。
おそらくそれを買いに来たのでは?
(店には在庫が無かったのですが)
手前にはやはり当時ヒットしていた
トーケンズの ”ライオンは寝ている”の
シングル盤もありますね。
ナナが映画館で観ていたのは
名作 ”裁かるるジャンヌ”(監督 カール・ドライヤー/1928年)
ナナも画面のジャンヌに合わせて涙を浮かべます。
ラストの悲劇の結末を暗示していますね。
”野火”
という日本語が見えますが
こちらは市川崑監督の1959年の作品でしょう。
海外でも高い評価を受けた映画です。
太平洋戦争末期のレイテ島が舞台となっていますが
主役の船越英二とミッキー・カーチスが素晴らしい演技を見せます。
二人とも彫が深くて日本人離れした顔立ちですし
”大声で怒鳴りあう”
”銃弾や砲弾が飛び交う”
といった類の戦争映画ではないので、そういう部分が
共感を呼んだのかもしれませんね。
ナナの若い恋人が読んでいるのは
エドガー・アラン・ポーの(超)短編
”楕円形の肖像”
今手許に無いのですが、確か
画家が愛する妻をモデルとして絵を描き始め、
一心不乱になって完成した時には
妻は既に死んでいた~という筋だったと思います。
ここにもナナの哀しい最後が重ねられていますね。
映画の終盤に長い行列のシーンがあるのですが
仲間&対抗意識が伺えて微笑ましい。
この作品は様々なポスターや張り紙が映るショットが
非常に目立つんですね。
セリフや役者に加えて、それらにもメッセージを持たせて
演技させてると思うんですよ、監督は。
(動いたりはしませんが)
観返す毎に新しい発見がある~
名作中の名作
ここにあり、の一言です。
VIVRE SA VIE TRAILER