バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

分からない、そのことを分かりながら観る映画 コーエン兄弟の ”シリアスマン”

f:id:bkkmind:20210309002807j:plain

 

これはですね、厳しい~

観るのがある意味

難しい映画です。

 

舞台は1960年代(おそらく67年か68年あたり)の

アメリカの田舎町。

ユダヤ系家族の物語です。

 

f:id:bkkmind:20210309003043j:plain

 

マイケル・スタールバーグは大学の物理学教師

いたって真面目で穏やかな性格です。

 

f:id:bkkmind:20210309003207j:plain

 

ところが妻がいきなり離婚を切り出します。

 

f:id:bkkmind:20210309003343j:plain

 

家に居候中の兄は警察に捕まってしまいます。

二人の子供もそれぞれに問題を抱えていて

マイケルは心中、穏やかではありません。

 

f:id:bkkmind:20210309003555j:plain

 

ある学生は単位を金で買おうとして

現金の入った封筒をマイケルの机に置いていきます。

 

隣人とのトラブルも発生して

どうにもならなくなったマイケルは

ラビ(ユダヤ教の指導者)や弁護士のもとを訪れて

悩みを打ち明けるのですが・・・

 

f:id:bkkmind:20210309004049j:plain

 

f:id:bkkmind:20210309004127j:plain

 

全編にわたって宗教~ユダヤ教に関する事項が

多く登場し、ヘブライ語も頻繁に使われます。

 

それらについての知識があれば

思わずニヤリ、あるいは爆笑する場面が

これでもかと(おそらく)詰め込まれているのですが

自分はそうではないので、受け止め方にズレがどうしても

出てきてしまうのですね。

 

しかし難解かというと、そうではなく

(さすがコーエン兄弟、そのあたりは抜かりがありません)

誰が観ても

ストーリーの進行についていけるようにはなっています。

 

登場人物の動きにコメディ性を持たせているので

見た目だけでも、面白いシーンが続きます。

(スタールバーグは控え目のロビン・ウィリアムスのような演技)

 

f:id:bkkmind:20210309005406j:plain

 

f:id:bkkmind:20210309005443j:plain

 

しかしそれでも一筋縄ではいかないところがあって

大学の授業でマイケルが

シュレーディンガーの猫(方程式)を

講義するカットがあります。

 

コーエン兄弟が意味も無く映すわけはありませんので

物理学の知識も必要ということになってきてしまいます・・・

 

www.youtube.com

 

思うに(分かっていない人間が言うのもなんですが)

この映画は、

寓話の積み重ね

なんですね。

 

映画の冒頭や

ラビの話す内容に

様々な寓話が含まれているのですが

マイケルに降りかかる様々な災難、

それは比喩やたとえ話ではなく

実際に起こっている事象であるのだけれども

それを含めて、人生は全て”寓話”で構成されているのだ

というメッセージがあるのではないかと。

 

では道徳的なオチが用意されているのかというと

(マイケル自身は極めて真っ当な人間であり、トラブルの原因は彼にはないように

見えます。マイケル自身もそう思っており、「俺はシリアスマンなのに!どうして、ど

うしてこんな目にあわなくてはいけないんだ」と叫ぶ場面が何回かあります)

残念ながらそうではなく、

バッドエンドを予兆させるエンディングになっているのが

これまたコーエンの真骨頂。

 

f:id:bkkmind:20210309011712j:plain

 

マイケルは結局、生徒からの賄賂を受け取ってしまうのですが

不吉な雨雲が更なる混迷の世界を暗示しているように思えます。

 

使用されている楽曲

ジミ・ヘンドリックスやジェファ―ソン・エアプレインについても

触れたいところですが

キリがありませんね・・・

 

何回か観直してみても、やはり分からないでしょう、私には。

繰り返し観ると分かってくるというタイプの作品もありますが

それともまた違いますので。

 

でもまた、観てみよう・・・

罪作りな映画であります。