うーん、これはいいですねえ。
実に良い。
日本映画のマイベスト100ですよ。
全編(111分と結構長い)通して
ニコニコでした。
長編の喜劇映画で、途中でダレないって
なかなか無いですよ。
川島監督の才気爆発ですね。
冒頭、国会質疑のシーンが続くのですが
野党議員に扮するのが菅井きん。
まず、つかみからして笑えます。
山村の息子が三橋達也
実は山村の秘書の北原三枝と付き合っていて
北原は妊娠しています。
山村の妻に戦前の宝塚スターの轟夕起子
50歳近い設定なのですが、なんと同じくご懐妊。
若い頃と違って、
すっかり貫禄がついていますが、お母さん役を好演しています。
山村と轟には三橋のほかに
二人の娘(既婚&未婚)がいるのですが
なんとこの二人も妊娠。
それに続きます。
とどめは山村が若い頃に付き合いのあった女性(山田五十鈴)に
実は自分の子供が居たという事実が
28年ぶりに発覚!
山村はじめ一同の右往左往~ドタバタが加速していきます。
日本映画、なかでも喜劇の生き字引である
作家の小林信彦も
普段の辛口批評ではなく、本作品を激賞しています。
脇の出演で登場場面は少ないのですが
フランキー堺のドラム演奏も楽しめます。
無茶苦茶上手いですねえ。
そして北原三枝のスタイルの良さ。
月並みな表現ですが完全に
”日本人離れ”しています。
他の共演者とシルエットが全く違いますね。
山村はじめとした家族全員、ある意味俗物なんですね。
完全な善人というわけではない。
しかし悪人でもないのです。
自分勝手なところもあるのですが、相手を許す思いやりも持ち合わせている。
そしてなにより気性が全員さっぱり。
”もう起きたことはしょーがないよ。これからのことを考えようよ”
”そーねえ、じゃあそうしましょう”
という爽やかさが
観ている側の気持ちを明るくさせます。
当時の日本(人口がまだ8900万人程度)と
今では社会情勢が圧倒的に異なるわけですから
時代を感じる場面もありますけど
役者のセリフや動きのテンポが非常に早く
”古くて観てられない” なんてことにはなりません。
三橋が一人三役をやったり
登場人物の会話がシンクロしたり
ズテーンとひっくり返ったり
2時間弱、最高に楽しめます。
天才、川島雄三にアプローズ!