ジョージ・キューカー監督の1944年作品
”ガス燈”
イングリッド・バーグマンがアカデミー主演女優賞を獲得した
彼女の代表作の1本でもあります。
オペラ歌手志望のイングリッドは
本来明るい性格の女性なのですが
結婚したばかりの夫(シャルル・ボワイエ)から
”君は心の病にかかっているのではないか?”
と事あるごとに指摘を受け
身心の調子を崩していきます。
夫の言動に不審を感じたイングリッド
ギリギリの精神状態のなか
夫の真意を探ろうと、一対一の対決を試みます。
20代後半のバーグマンがひたすら美しく
個性豊かな役者さんが揃っているのですが
どうしても彼女に目が奪われてしまいますね。
さて、このイングリッド版の4年前には
イギリスでも同名の映画が製作されています。
主演はダイアナ・ウィンヤードという女優さん。
バーグマンのような華はありませんが
落ち着いた演技でこちらも見応えのある作品に仕上がっています。
(イングリッドと比べて感情の起伏が控えめです。ラストの夫を問い詰めるシーンなど
両者を比較してみると面白いですよ)
小間使い役で出てくるキャスリーン・コーデル
どことなくバーグマンに似てません?
この ”Gaslight” はもともと舞台の戯曲ですが
後に、心理的に他者を虐待する行為を指す表現として
ガスライティングというワードが用いられるようになりました。
孤高のロックバンド
スティーリー・ダンのナンバーで、
”Gaslighting Abbie"
というタイトルの作品があります。
(アルバム ”TWO AGAINST NATURE” に収録)
上掲の映画にインスパイアされて作られたようですが
そこはドナルド・フェイゲン&ウォルター・ベッカー、
よりダークな
いってみればリンチ的な怪しさ(&エロティシズム)充満ワールド。
スタジオレコーディングにも参加している
女性コーラス隊がより前面にフィーチャーされていて
かっこいいですね。
歌詞は(おそらく、多分、もしかしたら・・・)
既婚者の男が浮気をしていて、その女性と一緒に
”邪魔な妻をどうやって始末しようか、毒それとも首を絞めて・・・”
などと相談していると
独立記念日を祝う花火が夜空に浮かび上がって~
という極めて”映画的な”内容(全然、違っていたりして)
三角関係になっているところが映画と違いますね。
イングリッドがこの曲を聴いていたら
”あら、面白そうじゃない。
私、ビデオクリップに出てもいいわよ”
なんて言ったかもしれませんね。
ちなみにこの曲の録音は1999年、
バーグマンがハリウッド製作の映画に初めて登場したのは
1939年です。
”別離”(初アメリカ映画主演作)のカメラテスト