”点と線” といえば
膨大な著作を残した松本清張の代表作。
映画やテレビドラマ化もされていますね。
作品が書かれたのは1957年なのですが、冒頭部分に
こんな会話があります。
”翌日の十四日の三時半ごろ、とみ子がレバンテに行くと、安田は奥の方のテーブルに来て、コーヒーを飲んでいた。「やあ」と言って前の席をさした。店で見なれている客を、こんな所で見ると、気持ちがちょっとあらたまった。とみ子はなんとなく頬を上気させてすわった。” (新潮文庫)
文中に登場するレバンテとは
1947年に開業したビアホール&レストラン。
当時としてはモダンでお洒落なスポット、
「こんな所で見ると・・・」というのは
見ずぼらしいとかパッとしないという意味合いではなくて
その逆ですね。
レバンテはフードメニューも充実していて
2003年に移転後(有楽町駅近く→東京国際フォーラム)も
オープン当初の人気料理が楽しめたようです。
手許にある雑誌(文藝春秋/2016年3月号)によると、
かきフライのタルタルソース添え 2060円
コンソメスープ 880円
ニース風サラダ 1030円
生ビール(大) 930円
となっています。
しかし2020年には、コロナ禍による客足減少により
その長い歴史に幕を下ろしてしまいます。
清張氏が生きていたら、きっと悲しまれたことでしょうね。
さて、”点と線”
作品自体のほうは
レバンテを後にした一行が
国鉄ホームで目撃する「数分間の偶然」について、
色々と議論もあるようですが
簡潔で明快な文体と
なにより抽象的なタイトル(作者のお家芸)
で、掴みはOK!といったところでしょうか。
点と線 予告編