これは傑作、と言っていいのではないでしょうか。
インドのというより
映画界の巨匠サタジット・レイの1963年作品。
マドビ・ムカージ
夫と子供に加えて
夫の両親、妹との同居生活。
暮らしぶりは楽ではありません。
かつて教師をしていた義父は
小遣い銭欲しさに昔の教え子を訪ね歩くという
困ったちゃんです。
家計を少しでも助けるために
ムカージは訪問販売(ミシン)の仕事に就きます。
人柄が良い彼女は
顧客をすぐに獲得。
妹と子供に服や玩具を買ってあげることが出来たのですが
夫や夫の両親はムカージが外で働くことに
渋い顔です。
いきいきと働くムカージに嫉妬する夫
ある日、夫の勤めていた銀行が倒産。
一家の収入はムカージ頼りになってしまいます。
夫は妻の上司に会いにいくのですが・・・
インド映画というと
踊るマハラジャ系や
派手なアクション(&恋物語)もの
あるいは社会的メッセージの強い硬質な作品が多いのですが
本作はそれらとは異なる落ち着いた仕上がり。
小津や成瀬映画のような感触がありますね。
日本の蚊取り線香のポスターが・・・
レイと名コンビのスブラタ・ミットラの
カメラワークが素晴らしい。
そしてなんといっても主演の
マドビ・ムカージの演技が秀逸です。
思慮深く、正義感があり
家庭の幸福を願う主婦を熱演しています。
(ムカージはレイの次作 ”チャルラータ” にも起用されていて、そこでは逆に富裕マダムの役柄。個人的には本作のほうが好みですね)
2時間15分とやや長めですけれど
ベンガル語と英語が(シチュエーションによって)
混ざり合うところなど興味深いですよ。
未見の方は是非に!
Mahanagar Trailer