バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

WE LIVE! WE LOVE! WE FIGHT! WE HATE! 異色の直球アメリカ映画 ”麦秋”

 

麦秋

といっても小津安二郎のそれではなく

1934年度のキング・ヴィダー監督作品。

(読み方も、むぎのあき となっています。原題は "OUR DAILY BREAD")

 

 

時は大不況真っ只中、

トム・キーンとカレン・モーリーの若夫婦は

親戚の紹介で荒れ果てた農地にやってくるのですが、

 

 

もともと都会人の二人

農作業などやったこともなく

途方にくれるばかりです。

 

 

そうだ、自分に出来ないことは誰かにやって貰えばいいんだ!

そして作物の収穫は平等に分配しよう。

農場の前の道路に

”求む、やる気のある人なら誰でも歓迎”

と書いた看板を立てます。

 

 

わらわらと人が集まり

やがて小さな共同体が作り上げられていきます。

リーダーはもちろんトム。

 

 

荒れ地が皆の力で

すっかり開墾されていきます。

感慨に浸るカレン。

 

 

しかしそこに干ばつが。

このままいくと農作物は全滅です。

トムは自信を失い、自暴自棄ぎみに。

彼に色目を使う若い女性と

都会に戻ろうとするのですが・・・

 

この映画の見どころはここからで、

トムは女の誘いを断って

近くの川から水をひくことを決意

完全人力で灌漑路を建設することを呼びかけます。

 

最初は半信半疑だった仲間たちも

総出で作業に取り掛かります。

残された日数は4日間

そうしないと畑の麦は枯れてしまうのです。

 

 

時間にすると10分ほどのシークエンスなのですが

まったく手抜きがありません。

というより異様な熱気が画面から伝わってきます。

急ごしらえですから、うまく水が流れないわけですが

それこそ皆、身体を張って

農地に水を送ろうと粉骨砕身です。

 

 

女性や子供も加わって

遂には水路は麦畑まで貫通。

 

 

実りの秋を迎えた季節に

トムとカレンはお互いを見つめ

微笑みを交わします。

「私たちのやってきたことは間違っていなかったんだ」

 

 

さてこの作品、

公開当時はヒットせず

また製作段階から資金調達に苦労続きだったようです。

(監督が私財をつぎ込んで完成)

 

というのも

見方によると

政治的~思想的な

プロバガンダのカラーが感じ取られるからですね。

コミュニズム全体主義的を肯定しているようにも取れるので

嫌悪感を示す人も多かったのでしょう。

 

おそらく監督の本意はそういったところに

あるのではなく、

一人一人の努力や

個人間の信頼、友情といったものを

描きたかったと思うのですけれども。

 

怒涛のエンディングをご覧になってみて

監督の胸の内を想像してみるのも

一興かもしれませんね。

 

Ending Scene from OUR DAILY BREAD

www.youtube.com