バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

偏執チックな色彩フェチ映画、ゴダールの ”彼女について私が知っている二、三の事柄”

 

ジャン=リュック・ゴダールの1966年作品。

 

 

ゴダールお馴染みの

ポスターべたべた構図

バンコク、日本、イスラエル

他にもバスター・キートン溝口健二監督の ” 雨月物語” 等々

あちこちに貼られております。

 

 

工事風景が頻繁にインサート(騒音も大きい)されますが

実は監督の正直なメッセージかと。

 

この映画、登場人物の会話が小難しいんですね。

子供まで抽象的な言葉遣いをします。

セリフを言う時も

「おいおい、どっちの方向見て喋ってるんだい?」

と聞きたくなるほど、視線が定まっていません。

 

要は、言葉を発している当人が

自分が何を言ってるのか分かってない~

そういう映画なんですね。

(建物はまだ完成していない~工事中)

で、監督も実は分かっていないわけです。

だから観ているあなた達も分からなくていい、

分かるはずもないという。

 

 

このカットもそういう意味合いですね。

もう何が何だかお手上げです状態。

 

この手の映画はついつい

政治的メッセージ云々とか社会的テーマがどうのこうの

と分析&深読みしたくなるのですが、

作り手が明確に意識化していないのだから

あんまり意味がないんですよね。

(監督はその辺りも狙っていて、ニヤニヤしているのかもですが。ベトナム戦争の画像やアジテーション的な字幕も入ってきますので)

 

 

それよりもですね、

この映画は色彩の洪水

特にピンク&赤の二色責めなんですね。

(青色を抑えにしている)

 

 

カフェ店内のワンシーンですが

極めて技巧的なカット割りですね。

最初の一組の男のネクタイが赤

(女性も赤系統)

次に登場する別カップルの

席後方遠くに映ってますね、赤ネクタイの男性が。

 

そして、この男女も

男が赤シャツ

女性もピンク柄です。

 

 

ジュークボックスの曲名表示もカフェの仕切りも赤

女性の頬がうっすらとピンクにメイクされています。

口紅も勿論ピンク。

 

 

車も給油所も赤!

(手前の植え込みの花も)

 

 

終盤の場面ですが

子供のシャツ&おもちゃのピストルにも赤い箇所

お母さんは上下ともピンク

 

 

夫婦のベッドもピンクと赤・・・

ここまでくるともう笑うしかない。

監督もそれを期待してるんじゃないかな。

 

 

トリビア的なポイントでは

能天気なアメリカ人旅行者を演じている

ラウール・レヴィは

この作品のプロデューサーでもありますが

同年の12月31日、映画公開を待たずに自死

生前最後の姿が「記録」されているわけですね。

(それにしても女性のブラジャーがまたまた赤、加えてレヴィのシャツが星条旗

 

レヴィは二十歳そこそこの女性の部屋の前で

自ら拳銃を腹にぶち込んだようですが

ヌーヴェルヴァーグ界隈の人間関係はもう

ぐしゃぐしゃでしたからね・・・・

 

"Deux ou trois choses que je sais d'elle"     Trailer

www.youtube.com