バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

小津安二郎と春夏秋冬

 

小津安二郎の戦後の作品、

そのタイトルには季節~季節の風物を

冠したものが多いんですね。

 

”晩春”

麦秋

”早春”

"彼岸花

秋日和

小早川家の秋

秋刀魚の味

 

 

これはちょっと目を惹きますね。

というのも同時代の他の監督作品では

そういうことはあまり無いので。

 

黒澤明の戦後の公開作は30近くありますけども

季節を感じさせる言葉が含まれているのは

”ハ月の狂詩曲” くらいでしょう。

 

木下惠介作品ですと

”海の花火” ”喜びも悲しみも幾歳月” ”惜春鳥” ”春の夢” ”二人で歩いた幾春秋”

などが。

語感が女性的というかロマンティックな響きですね。

 

小林正樹では20作以上あるなかで

”燃える秋” くらいですね。

 

溝口健二になるとゼロ、かな。

 

小津とくれば成瀬巳喜男ということで、

この人ですと相当数ありそうな気もしますが

”春のめざめ” ”薔薇合戦” ”驟雨” ”鰯雲” “秋立ちぬ”

あたりがそうでしょうか。

しかし戦後の製作数の比較では

小津監督の3倍くらいありますからね。

 

 

で、面白いのは

かといって小津作品のそれらが

やたらに「季節感」を前面に出しているかといえば

そうでもないんですよね。

 

室内シーンの比率が高いということもあるんでしょうけど

他の監督のほうが

(例え題名が季節、四季といったものに関係がなくとも)

よっぽどダイナミック~雪が吹きすさぶとかジリジリと太陽が照りつけるなど

のシーンが多いですよ。

 

小津監督の最終3作品には

いずれも「秋」という言葉が使われています。

 

もし60歳の若さで病に倒れることがなかったら

その後の作品には

「冬」という字が使われたのでしょうか。

 

どんなストーリーで

どんな配役になったのかな?

あれこれ考えてみるのも

また一興かも。

 

 

秋刀魚の味 予告編

www.youtube.com