これは冴えた映画ですねえ。
サミュエル・フラーの1953年作ですが
観て損のないシャープな80分です。
(長過ぎないのがまたGOOD)
ニューヨークの地下鉄車内
若いスリの男(リチャード・ウィドマーク)が
女(ジーン・ピーターズ)のハンドバックから
財布を盗みます。
女は上司(男女関係にある)に事の顛末を報告。
するといきなり激怒されます。
「この間抜け野郎!ニューヨーク中をくまなく探して、その男をここへ連れてこい」
女は色々と伝手を辿って男に接近。
そして、あれよあれよと二人は惹かれ合ってしまうのです。
しかしこれら一連の行動を
警察&FBIの捜査チームが全てチェックしていたのでした。
女の上司は東側(東西冷戦の時代です)のスパイであり、
盗まれた財布には国家機密レベルの情報が記録された
マイクロフィルムが入っていたのです。
そんなことは露とも知らず
ウィドマークとピーターズは激しく恋の炎を燃やしていたのですが
やがて二人も事の重大さに気づきます。
ピーターズはウィドマークにフィルムを返すよう
迫りますが、ウィドマークは一攫千金を企むのでした。
しかし危険が刻一刻と二人の身に・・・
(警察は敵の組織を一網打尽にするため、ウィドマークとピーターズをわざと泳がせている設定)
癖のある役どころをポーカーフェイスでこなす
コケティッシュな魅力全開の
ジーン・ピーターズ
配役がビシッと決まっています。
(当初はマリリン・モンローの起用も検討されていた)
そして撮影を担当したジョセフ・マクドナルドが最高!
俯瞰とあおり(仰角)にこだわった
カメラワークがあまりに名人芸です。
出番はそれほど多くないのですが
アカデミーノミネート6回のベテラン女優
テルマ・リッターが素晴らしい演技を見せます。
フィルム・ノワールのジャンルでは
ベストの作品のひとつだと思いますね。
これはお茶とか紅茶じゃなくて
アルコール(あるいは濃く淹れたコーヒー)を
お供に、深夜の時間帯にどうぞ。
”拾った女” Trailer