1930年代中頃のニューヨーク、
エドワード・G・ロビンソンは勤続25年の
朴訥な経理マン。
家では妻の尻に敷かれっぱなしで
頭が上がりません。
そんな彼の唯一の趣味は絵を描くこと。
アパート暮らしなので浴室がアトリエ代わり。
ある晩ロビンソンはセクシーな美女(ジョーン・ベネット)に出逢います。
彼女の歓心を買いたいために
自分をプロの画家だ、と偽ります。
ベネットには遊び人の情夫(ダン・デュリエ)が。
おい、そいつから金をありったけ巻き上げるんだと
ほくそ笑むデュリエ。
ベネットは巧みな芝居で
ロビンソンに金銭や住居をおねだり。
ロビンソンは遂に会社の金に手をつけてしまいます。
デュリエはロビンソンが描いた絵を
ベネット作として画商に売りつけます。
若くて美しい女が描き手ということもあって
新聞で大々的に紹介されるほどの人気に。
ロビンソンは自分の作品が評価されるなら
それで構わないと納得していたのですが
ベネットとデュリエが男女の関係であることを知って
ショックを受け、ベネットを問い詰めます。
君は僕と結婚してくれるんじゃなかったのかい?
ベネットが本性をさらけ出します。
”このおいぼれさん、醜い爺さん。今頃気づいたの? 本当の男ってのは私の彼氏(デュリエ)のように強くなきゃ。とっとと消え失せなさいよ”
ロビンソンは激怒
アイスピックでベネットを殺害します。
(ベネット殺しはデュリエの仕業とされ、ロビンソンの偽証でデュリエは死刑に。してやったりのロビンソンはしかし会社の金を盗んだことが知られ解雇。世間には絵の作者はベネットと認知されているため、今更絵を描くことも不可能。自暴自棄になって身を持ち崩していきます)
「作者が死んで」
希少価値となったベネットの作品は
驚くほどの高値に。
”なんて素敵な自画像でしょう”
”これほどの作品はもうでないでしょうねえ。この人殺されましたから・・・”
画商と客が会話を交わしているすぐ横を
実際の作者ロビンソンが虚ろな表情で
ただ通り過ぎていくのでした・・・
脚本の出来が良くて
監督が名匠フリッツ・ラング
演技も的確で、観応えのある逸品です。
"Scarlet Street" (1945) Trailer
さて、絵画がテーマ&重要なモチーフになっている
映画や小説は相当数あると思いますが
松本清張の ”青のある断層” は
著者の比較的初期の短編。
名も無い若い画家の絵を突然、画商が高額で買い取ってくれるようになります。「あなたの絵がやっと認めてもらえたのよ」涙を流して喜んでくれる彼女の言葉と裏腹に「なぜ俺の絵がそこまで・・・」男の疑念通りに、暗い真相が隠されていたのでした・・・
推理小説ではないのですが
ストーリーテリングの妙が味わえる
こちらも逸品であります。
(清張は画家や画商、美術評論家を主人公にした作品をよく書いてますね)
併せてどうぞ。
*”或る「小倉日記」伝”/新潮文庫に収録