オットー・プレミンジャー監督の初期作品
"FALLEN ANGEL" (1945年)
それほど話題に上る作品ではないですが
(そして実際いまひとつ盛り上がりに欠けるのですが)
観どころの多い一本でもあるんですよ。
ヒロインが二人
リンダ・ダーネルが悪女~魔性の女
アリス・フェイが純真で正直な女性
つまり天使と随天使というわけですね。
流れ者の寸借詐欺師ダナ・アンドリュースが
カフェの女給リンダ・ダーネルに出逢います。
(店の主人は初老ですがリンダにぞっこん。客そっちのけでリンダに食事を出します)
店内の時計は(夜の)10時7分あたりを指していますね。
一方ダナは姉妹で暮らす資産家に目を付けて
妹と結婚~財産を奪う計画を立てます。
屋敷を訪ねたのが翌朝の10時7分。
これみよがしのカットですが
監督、お客さんに気づいて欲しかったんでしょうね。
細部に凝っているところを。
妹のアリス・フェイは教会で演奏会をするなど
真面目な性格です。
リンダはフェロモン爆発で
複数の男が彼女を狙っています。
ダナも例外ではないのですが
ここで事件発生
ストーリーは急展開となっていくのですが・・・
リンダとアリスはあくまで対比させる存在ですので
絡みはないのですが
一瞬同じ場面で交差するシーンがあります。
酒場でダナがアリスをダンスに誘います。
アリスは恥ずかしそうな素振りを見せるのですが
思い切ってダナの腕の中へ。
そこに別のボーイフレンドと踊っている
リンダが画面に入り込んできて
ダナと視線が合います。
(背を向けているアリスには分からない)
接近するダナとリンダ
実に技巧的なカットで
映画ファンは興奮&大拍手ですね。
(撮影監督はアカデミー撮影賞受賞者のジョセフ・ラシェル)
悪女役のリンダ・ダーネルは撮影当時
21、2歳ですが
その若さを微塵も感じさせない
堂々たるファムファタール振り。
実生活は映画以上にジェットコースターの人生で
4回の結婚、ギャラに関しての裁判沙汰、過度の飲酒癖
肉体&精神面での不調が重なったうえ
41歳で煙草の不始末により焼死してしまいます。
(寝入ってしまったダナから煙草をそっと取り上げるアリス、なんとも皮肉なシーン)
一方のアリス・フェイは
歌って踊れる当時の大スター。
"Sing,Baby,Sing" Alice Faye
そんな彼女が初めて挑んだ
シリアス路線の本作だったわけですが
出来上がってみると、なんと自分の出番が大幅にカット。
(会社としては若いリンダ・ダーネルを売り出したかった)
激怒したアリス・フェイはプロデューサーに辞表を叩き付け
本当に映画界を去ってしまったのでした。
(後年にごく僅かのみ出演作あり)
映画もいろいろ
人生もまた
いろいろであります。
"Fallen Angel" (1945) Trailer