おっ、面白い構図ですよね。
”暗い鏡” という作品で
あまり知られていませんけれど
これは今観ても楽しめるお勧めの一本。
(1946年公開)
殺人事件が起きるんですね。
で、一人の女性が怪しいと。
しかし鉄壁のアリバイがあるわけです。
なんとですね、一卵性双生児の姉妹だったんですね。
まったく見分けがつかない。
刑事たちも取り調べで大混乱。
えーと君がお姉さんで、えーとあなたは妹?
もう分からん!
これならどうかしら?
非常に分かりやすいネックレス
TERRY と RUTH
(なんかペットの動物みたいですが)
警察は心理学者(リュー・エアーズ)に応援を求めて
どちらが犯人かを突き止めようとします。
リューは様々な心理テスト(抽象的な絵を見せて何に見えるか尋ねる)を
二人に試すのですが、
その結果二人の性格~内面が全く違っていることを発見します。
ある単語を聞いて、どんな単語を連想するかといったシーンは
江戸川乱歩の初期の傑作
”心理試験”(1925年発表)を
思い出させますね。
(事件に関係するワードを挟み込んで、反応時間の違いを比較)
実は
一見社交的な姉は
慎ましやかな性格の妹に嫉妬を覚えていて
無意識のうちに
妹の行動をコントロールしていたのですね。
(双子でなおかつ鏡を使った重ね技ショット)
まず撮影技術が素晴らしく
70年近く経った現在からしても
不自然さがほとんどありません。
またこの手のシークエンスは
撮影や編集の手間もかかりますし
女優さんは同じ場面を2回演じなくてはならないので
ここぞという時に少しだけ使うのが普通ですが、
この作品では出し惜しみすることなく
二人が同時に映っているシーンが
全編にわたって登場します。
一人二役~それも性格が異なる
難役をこなしているのが
さすがアカデミー主演女優賞を2度受賞しているだけのことあって
圧倒的な演技力全開。
心の奥底に隠していた
暗い(ダークな)激情が噴出するシーンは
まさに独壇場です。
惜しむらくは事件の謎を解くリュー・エアーズの弱さ。
姉妹がどちらも好きになってしまうという流れになっているのですが
そういった男の色気はまったく感じられず
むしろ枯れた風情のおじいさんになってしまっているのが残念。
(エアーズは演技力に定評のある人なので、これはキャスティングの問題ですね)
ちなみに本作は昨日の ”らせん階段” と同じ監督
ロバート・シオドマクが手掛けてるんですね。
(公開年も同じ)
個人的にはこちらのほうが
10倍、面白いと思いますけれど・・・
参考書籍