バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

共同体から二度、疎外された男の物語 "DRAGON'S RETURN"

 

これは寓話ですね。

特定の国とか時代が設定されているわけではない。

 

人里離れた村落に

眼帯姿の男がやってきます。

かつてはこの村の住人でした。

 

 

男を見かけた村の女

昔日の幸福だった記憶が

蘇ります。

 

(非常に技巧的な連続ショット、監督のセンスの冴えが感じられます)

 

かつて二人は深く愛し合っていたのですが

男は村人から追放されてしまったのです。

 

(目の傷はその際に暴行されたもの)

 

男が村を去ってから

女は意に添わぬ別の男と結婚。

かつての妻の恋人の突然の出現に

夫は激しい嫉妬を覚えます。

(命まで奪おうとする)

 

 

夫の策略で

男は再び、村を追われることに。

ただ一人

荒野に向かって歩を進めます。

 

 

女は夫の肩越しに

ただ男の姿を見つめるだけでした・・・

(男が村に帰ってきてから、二人は一度も会話をしていない)

 

カメラ撮影が非常に特徴的で

ごく近く、手前の人物にしか焦点があっていません。

(いわゆる近視の世界)

ですので背景は全て霞んでしまっています。

 

1968年度のチェコスロバキア映画なのですが

(監督/Eduard Grencner)

当時のチェコを取り巻く状況や

監督の心情を反映させているのでしょうね。

(男が片目を失っていることや、舞台を架空の場所や時代にしている点を含めて)

 

村の女を演じる Emília Vásáryová は

気品のある美しさで印象に残りますが

近年に至るまで息の長い女優活動を

続けています。

 

 Emília Vásáryová reflects "Drak sa viracia"

www.youtube.com

 

少々眼が疲れるかもしれませんが

ご興味のある方は是非に本編(85分)をどうぞ。