16歳の原節子
可愛いというより
既に美しさが際立っていますよね。
しかし演技力、ということでは
限界が当然あるわけです。
それを補うのがまさに
監督とスタッフの腕の見せどころ。
セリフ数を必要最小限に削って
子役を登場させることで
原の抱えている苦悩を強調させます。
原の弟役(市川扇升)もまだ17,8歳でしたので
こちらもそれほどの芝居は出来ません
視線を交差させないように、身体向きを微妙にずらしています。
弟はのっぴきならない状況に追い詰められており、
原は自分自身を犠牲にするしか
残された方法がありません。
弟もそれを察しているのですが
両者ともそれを口にしてしまうのは
あまりに辛く悲しいことです。
原は部屋の隅に逃れて
一人で静かに涙を拭います。
その頃、大人たちのただならぬ雰囲気を察した子供は
一人家を離れて
紙風船で遊びながら遠ざかっていきます。
空からは雪が・・・
なんという完璧なシークエンスでしょうか。
監督の山中貞雄は
これから3年も経たないうちに
戦地で亡くなります。
僅か28年の生涯でした。
戦後も健在であったなら
間違いなく日本の
いや、世界の巨匠になっていたことでしょう。
合掌・・・
”河内山宗俊” (1936年)河原崎長十郎、中村翫右衛門、原節子(セリフが棒読み)