バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

60代~80代のベテラン俳優4人が主役 ”午後の遺言状”

 

新藤兼人監督の1995年公開作。

 

非常に評価の高い作品で

その年のキネマ旬報

日本映画第一位を獲得しています。

 

 

杉村春子乙羽信子、朝霧鏡子、観世栄夫といった

シニア勢が主役。

特に杉村春子はセリフの数がかなり多く

全篇出ずっぱりです。

(対して乙羽信子は受けの立場)

 

 

朝霧鏡子は戦前から戦後にかけて

大変人気のあった女優さんで

これまた絶大な人気のあったコメディアン

清水金一と結婚した人ですね。

 

 

この作品では認知症が進行している

という難しい役どころを熱演しています。

 

 

朝霧を献身的に支える夫に

能楽師観世栄夫

見せ場がしっかり用意されています。

 

 

杉村春子は老舞台女優という設定ですが

撮影時には80代後半の年齢で

実際に舞台にも出演を続けていました。

 

若い頃の思い出を語るセリフがあるのですが

杉村のデビュー当時の演目や劇場名が織り込まれていますね。

 

 

乙羽信子は体調が悪化していて

映画の公開を待つことなく

70歳で亡くなりました。

(杉村、朝霧も数年内に世を去ります)

 

杉村のポンポン飛び出す質問やリクエストに

淡々と答えていく様がまさに圧巻。

超絶級の芝居巧者ぶりを堪能することができますね。

 

 

死がテーマとなっている映画ですが

シリアス一辺倒ということではなく

ユーモラスな場面も散りばめられています。

(ただ、今の若い世代に良さが伝わるかな・・・杉村春子乙羽信子の若い時分の出演作にある程度親しんでいないと、面白味が半減してしまうような気もしますね)

 

”ジュニア” 世代の役者陣では

津川雅彦倍賞美津子、永島敏行も登場しますが

まあほんの顔見せ。

松重豊も出ていますが、若すぎて

ちょっと気付かないくらいです。

 

60代過ぎで

未見の方が居られたら

どうぞ、濃く淹れたお茶とお煎餅を

お供に是非。

 

 

参考図書

「昭和芸人 七人の最期」笹山敬輔・文春文庫

「君美しく」川本三郎・文春文庫

杉村春子  女優として 女として」中丸美繪・文春文庫

「愛妻記」新藤兼人・文春文庫

映画検定 公式テキストブック」キネマ旬報映画総合研究所編・キネマ旬報社