バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

”覚えていない”迷宮世界 桐野夏生の「柔らかな頬」

 

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精力的に作品を発表している

桐野夏生の1999年著作。

 

これは渾身、超絶の一冊で

”棺桶に入れる書籍”の筆頭ですね。

 

メインのテーマは幼女失踪事件で

母親と家族、母親の不倫相手、元刑事など

様々な人物が登場し、

それぞれの視点で事件が再現~

語られていくのですが

その詳細はことごとく食い違い、

物語は混迷の度合いを深めていきます。

 

主な舞台は北海道に置かれているのですが

この作品で描かれているのは

風光明媚な、自然の美しい、

北の大地ではなく

まさに魔界そのものです。

 

直木賞を受賞しましたので

書評等は多数あるのでしょうが

この作品世界を文字で伝えるのは不可能でしょう。

 

音楽で例えるならば

この感触です。

 

PETER GABRIEL    Intruder

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頁をめくる度に

氷柱を読者の心に

打ち込んでいくような。

 

通常のミステリー小説とは

肌合いが全く違いますし

いわゆる犯人捜し小説でもありません。

(その部分を期待すると消化不良になるかも)

 

文庫本ですと上下巻2冊ですので

かなりのボリュームなのですが

ダレる箇所は皆無です。

 

私は際立っての

傑作だと思います。

 

「普通仕立て」の世界に飽きた方は

是非どうぞ。

読後感が良いかについては

保証しかねますが・・・ 

ミュージカル!ミュージカル! 至宝のダンスシーンを堪能しよう

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ずっと以前、日本の知人と映画の話になりまして。

絶対にミュージカル映画は観ない、というんですね

その方。

 

訳を聞いてみたら

「なんで会話の途中でいきなり踊りだしたり、突然歌い始めるんだ?

そんなのおかしいだろ!」

とのこと。

 

うん、まあ確かにそう言えばそうかも。

その人は翻訳ものの推理小説とかハードボイルドが好きだったので

あくまでリアリティ重視だったんでしょうね。

 

ミュージカル映画は基本、ストーリーは従で

歌と踊りのシーンについては独立して楽しむといいんですけどね。

(勿論、全体の脚本が練られているほうがベターですが)

 

AN AMERICAN IN PARIS  1951

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お馴染み ”巴里のアメリカ人” から。

G・ケリーはこういうシーン、ぴったりですね。

アステアだと ”上品なおじさん” になっちゃうけど

いかにも陽気なアメリカあんちゃんという雰囲気です。

 

FOR ME AND MY GAL  1943

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ケリーとJ・ガーランドの組み合わせですが

合わせるというより、それぞれ勝手に?こなしてる

というかあまりお互い気にしていないような・・・(特にジュディ)

後半、ジュディは明らかに疲れてますね。

”絶対、撮り直しには応じないわ!” という顔してますね。

そこがまた面白いですけれど。

 

LES GIRLS   1957

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ケリー絡みでもう一本

相手役はミッツィ・ゲイナーですが

この人は無茶苦茶踊り、上手いですね。

素晴らしい身体のキレ、

それだけでなくセクシーな雰囲気もありますし。

赤と黒のセット&衣装がモダーンでGOOD。

 

ANYTHING GOES   1955

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上手いといえば男性では

ドナルド・オコーナー!

ミッツィとの組み合わせですが

テクニシャン同士なので超余裕、

何でもできるという安心感いっぱいです。

 

BROADWAY MELODY   1940

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御大を忘れちゃいけませんね、F・アステア。

アステアと五分で渡り合える数少ない相手が

戦前の人気スター、エレノア・パワエル。

あまりにも素晴らしい二人・・・

 

STORMY WEATHER  1943

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名場面といえばこれを外すわけにはいかない

ニコラス・ブラザースの神技。

キャブ・キャロウェイの名調子で登場する

二人の至芸に目が釘付けですよ。

これ、オリンピック選手でも無理じゃないのかな?

演奏してるミュージシャンは迷惑そうですが・・・

 

まだまだ超絶の場面が沢山ありますけれど

キリがありませんので、また日を改めまして。

タルコフスキー vs KUROSAWA 映像美の極致に浸る

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映画の魅力って色々と挙げることができると思います。

よく練られた脚本、豪華スター共演、最新のCGやSFX技術・・・

では ”映像美” というキーワードで思い浮かぶ作品はというと

その筆頭のひとつはこちらかと。

 

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言わずと知れた黒澤明の”乱”(1985)

 

正直に言えば、全編通して観るには

「しんどい」映画です。

欧米での評判は極めて良いのですが、

日本の著名な映画評論家や

かつて黒澤と何本も共同で脚本を書いてきた、

いわば身内の立場の人からは

辛口の評価が多いようです。

 

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私も、この作品は映画というよりも

言い方が適当かどうか分かりませんが

「巨大なサイズの紙芝居」を見ているような感覚になってしまい

黒澤の残した作品群のなかで上位に位置するものではありません。

 

しかし随所に目を見張るシーンがあるのは間違いなく、

映画監督というよりは、画家として

黒澤明を捉えると

しっくりはまる162分ではないかと。

 

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その黒澤と親交があったという

アンドレイ・タルコフスキー

寡作なうえ、50代で亡くなりましたので

残された本数は少ないですが、まさに映画界の巨人的存在。

 

ノスタルジア”(1983年)のこの映像世界・・・

もう言葉など不要ですね。

 

著名なノンフィクション作家

柳田邦男の著書 ”犠牲 サクリファイス

 

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ご子息の自死から脳死までの11日間の記録ですが

文中にタルコフスキーの遺作 ”サクリファイス”(1986年)について

触れられた箇所があります。

 

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この作品には

ノスタルジア” と同じくタルコフスキーの主要なモチーフ

火と水のシーンが頻繁に登場します。

 

火を消さないためには水を遠ざけねばなりません。

身体が水に浸かったら

その火を高くかざすことが求められます。

 

人がこの世を生きるために

何かを守るために

献身、犠牲、生贄が必要とされているとしたら?

 

そうであれば、我が身か

もっとも自分が大切にしていた何かを

焼かなければなりません。

それは神や悪魔との契約なのですから・・・

 

タルコフスキーの世界を真に理解するには

私のように特に信仰する宗教を持たない人間には

とても及ばない部分があります。

 

黒澤はタルコフスキーのような

タルコフスキーは黒澤のような

映画を撮りたかったのかもしれませんね。

 

 

ひらひらと舞う蝶のように軽やかなUKフォークロック DONOVANの世界

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二十年近く前、東京に居た頃の部屋の写真なんですが

エルトンの隣のブルーのCDボックス

ドノヴァンですね。

今は手許にないですが。

 

この人の歌世界、独特で魅力あるんですよ。

じゃあ、手放すなよという話なんですが・・・

 

There Is a Mountain   1967

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とても軽い(良い意味で)。

ひょうきんで楽し気な感じしますよね。

ボブ・ディランと同じ世代の人で

ビートルズとも交流があったベテランアーティストですけれど

ギラギラ自己主張大爆発系でないから

構えないで聴けますね。

 

 Epistle To Dippy  1967

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シリアスな気持ちがふっと抜けて

一緒に手拍子でもしてみっか!

みたいな気持ちになりません?

 

Jennifer Juniper   1968

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60年代に英米ともに大きなヒットが続きますが

70年代中盤以降は完全に鳴かず飛ばずになってしまい

表舞台からは消えてしまいました。

 

なので、ロックヒストリーのなかでは

目立たない立ち位置に甘んじていますけれど

いやいや、間違いなくリジェンドの一人ですよ!

(今年で74歳、ニューアルバム発表&ライブ開催も)

 

Lalena / Happiness Run    1968

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Diggin' The Future Now   2019

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旨い!タイ南部料理の数々、辛いけど・・・

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タイの地方料理というと

東北部(イサーン)が非常にポピュラー、

北部のカオソーイなども知名度が高いですね。

 

それらに比べると南部の料理はあまり馴染みがないかもですが、

これがですね、実に味わい深いのですよ。

 

画像はスープヌアという一品。

大きな牛テールがごろごろ、肉もホロホロと柔らかい。

シナモンとかカルダモンで味付けしてますんで香りも良いです。

 

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こんな感じでテイクアウトも簡単です。

 

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美味しそうでしょ!

上はタイでよくあるトムヤム味のラーメンなんですが

スープが濃厚、ポタージュのようでコクがある。

ターメリックも入ってるかな?

日本のエスニック料理屋さんでメニューにしたら

人気でますよ、きっと。

 

下は”鶏肉丼”、別添えのタレを付けて食べるんですけどね。

豚肉パターンが多いんですが、南部はモスリムの人も多いので

鶏肉バージョン。

あまりバンコクでは見ないですね。

 

他にも種類色々あるんですよ。

(私は北、東北料理よりも好きなものが多い)

難点はあまり店数がないんです、バンコクでは。

お洒落な高級レストランはあるんですけどね、ワインと合わせるような。

(日本のタイ料理屋さんでも、南タイの料理はあまり登場しないと思います)

 

 フードコートで見つけやすいのは

 

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カオモックガイ、あたりかな。

 

ゲーンソムという酸味がある

スープもよく見かけます。

(ただ多くの店では薄い味付けになってしまってますが)

 

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バンコク市内ですとラムカムヘン通り~ミンブリ方面に

専門店が多いですね。

都市鉄道の新線が建設中なので、完成したら行きやすくなります。

 

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機会がありましたら、南部料理の数々

お試しあれ!

GOOD GOOD BYE ~さよならレコード&CDショップ

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日本に居た頃

レコード(のちにCD)ショップ、

実によく行ってましてね。

 

ディスクユニオンレコファンHMV、TOWER RECORD、

山野楽器、WAVE・・・

 

新宿、池袋、お茶の水、渋谷、横浜・・・

 

昔は店舗がいっぱいあってね、もう体力勝負。

周ってるうちに荷物はどんどん重くなるわけで。

本も買いたいから神保町界隈に来ると危険、

”いかんいかん、今日は欲しい本があっても我慢我慢”

てな感じで。

 

で、キッチン南海(かつカレー、生姜焼き)とか、いもや(天婦羅、かつ定食)

さぶちゃん(半チャンラーメン)、バンビ(洋食プレート)

エチオピア(スパイシーカレー)あたりで空腹を満たし

茶店でしばしの休憩、またまたショップへ向かうという。

 

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高校の頃には月に2回くらい学校サボって(勝手に隔週二日休みとしてましたから)

社会人になってからは勤め帰り&休日にという具合で

実にヘビーローテーション

いったい、延べにするとどれくらいのディスクを買ったのか(そして手放したのか)

 

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海外旅行に行く時も(タイが多かったわけですが)

旅先で音楽ショップ、よく覗いてましたね。

80年代はカセットテープが主流でしたよ、アジアでは。

20年位前にはバンコクのデパートにTOWERとかありましたね。

試聴できるんで、気に入ったタイポップス

ほいほい買ってました。

 

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今や、こういう店は風前の灯。

閉店したところのほうがずっと多い感じですね。

完全に過去の遺物、一部の愛好家向けの骨董状態。

レトロ&アンティークな

オブジェグッズとして扱われたり。

 

まあ、でもいいんだ。

聴いて、聴いて、また聴いて

もう存分に過ごしてきましたから。

 

いつも頭の中でなにがしか、今でも音楽が響いているけれど

東京の街で音楽ショップ巡りしていた日々を懐かしむとしたら、

この曲がすっと浮かんできました。

 

PIZZICATO FIVE   Goodbye,Baby & Amen

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有難う、レコード&CD屋さん 何十年も!

 

”今日はお目当てのディスクがあるかな?”

とワクワクしながら向かう

あの空間が大好きだったよ。

曲良し 映像良し あまりに良すぎて失神だ!~タイポップス万歳 その④

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洋楽聴いて半世紀、擦れっからし耳を持つ爺さまにも

新鮮に響くタイポップス。

 

新旧取り混ぜて

今日もどんどんいってみましょう。

 

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う~む、海外旅行に行きたい!

とうずうずしてしまう人も多いのでは?

YELLOW FANG、このグループはどの曲も

最高にキャッチーですね。

 

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ご時世でコロナソング。

このバンドは"WONDER WHY" "UDON TOWN"

の出来があまりに素晴らしかったので

それと比べるとちょい、印象が弱いですね。

でも独特のセンスを持った好ユニットなので

今後も期待ということで。

 

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独特のセンスといえば、temp.

この曲でもすっとぼけオフビートの独自サウンドを展開。

 

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ある意味タイならではのビデオ。

LGBTについての歌はかなり多いんですが

まず曲がそもそも、完成度が高いですね。

このバンドはメロディアスな佳曲連発です。

 

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さあ、ここからがおっさんアワー

いきなり20年前にタイムマシーンということで。

 

いや~、これはもう最高でしょう。

タイポップスのマイベストですよ。

移ろいやすいのは男の心なのか、女の心なのか・・・

 

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一世を風靡したTK(Triumphs Kingdom)の

お別れ~さよならの

スワンソングです。

 

”あなたと私が見つめ合って微笑む最後の日

今日という日がとうとう訪れた

でもどうか分かって欲しい

二人の間には絆がまだあることを

もう会えないというのなら

約束しよう

あなたが戻るその日まで

私は待っている

それが私のこれからの一生であったとしても”

 

TKというとイケイケのヒット曲が多いんですが

こういうセンチメンタルなナンバーも

魅力的ですね。

 

というわけで

今回はこのあたりでお開きに。

 

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