香川京子というと
清楚で上品でおしとやかな・・・
というイメージが一般的だと思うのですが
この作品では爆発&炎上しています。
狂騒的ともいえるほど。
監督は前年(1955年)に ”夫婦善哉” を製作した豊田四郎。
今回の主役も引き続き森繁久彌です。
森繁はまったくやる気のない
ぐうたら男なのですが
大の猫好き。
森繁をめぐって三角関係になるのが
香川と山田五十鈴。
まさに女と女のぶつかり合い。
山田はこの手の演技はお手の物なのですが
意外なのが香川京子。
髪の毛はボサボサですし、着ている服もだらしなく
あばずれ一直線。
感情の起伏も激しく、すぐに激昂調になります。
最期は山田五十鈴と
取っ組み合いの大喧嘩になる始末。
二人の人間を
猫の喧嘩に例えているわけですね。
おお、人間は怖い
ホンモノの猫が一番だ
と、雨降りしきる中
猫を抱えて、
海岸を歩く森繁の姿がラストカット。
後年の香川京子のインタビュー(君美わしく/川本三郎著)によると
ご本人はこの作品に
あまり納得がいっていないようです。
”うーん、怖かった。わたしはあの役はあんまりやりたくなかったんですね”
”自分の意識みたいなもの持っているとできないんですよ。全部捨てて、とにかくどうにでもなれっていう感じ。それで終わったみたい(笑)”
確かにちょっとやり過ぎというか、オーバーな印象を受けてしまう感あり。
その意味では ”夫婦善哉” のほうが、まとまりが良かったように思いますね。
あとちょっと驚くのは衣装の露出度。
香川が水着姿や下着姿になるのですが
当時ととしてはかなりの過激さではなかったかと。
インタビューでは
”ちょっと恥ずかしくて、いま見られませんけどね(笑)”
と答えています。
原作は谷崎潤一郎なのですが
谷崎自身、大の猫好きで
口移しで餌を与えるほどの溺愛ぶりだったようです。
この作品はテレビドラマ化もされていますが
かの手塚治虫も
人気シリーズのブラックジャックで
”ネコと庄造と”
というタイトルで漫画にしています。
こちらは男と女のドラマというものは一切無く
原作との関連性はあまり無いのですが
ネコ好きの方が読んだなら、最後は涙腺があやしくなってしまうでしょう。
それにしても動物を描かせると
手塚先生、天下一品であります。