名匠フリッツ・ラングの1921年作品
(”メトロポリス”の6年前ですね)
これはですねえ、
「上手い!」の一言なんですよ。
昔の映画ですよ、100年以上前の。
でも現在に至るまで、のちの映画作りに関わる全ての人たちに
実に大きな影響(アイデア&インスピレーション)を与えていると思いますね。
愛し合う若い男女を
不気味な黒服の男(ベルンハルト・ゲッケ)が付け回したた挙句、
彼氏を連れ去ってしまいます。
男の正体は死神で
彼氏をあの世に送ってしまったのですね。
死神は、
彼を助けてください!
と懇願する女を、”蝋燭の間” に案内します。
「それぞれの蝋燭には様々な人生が詰まっている。今あなたに3本の蝋燭をあげよう。火が消えないうちに、死を遠ざけることができるかな?」
以後、女は時空を超えた物語の世界に投げ込まれ
男の命を救おうと試みます。
1本目の蝋燭はバクダッドが舞台
しかし奮闘むなしく
男は死んでしまいます。
殺したのは、そう
死神です。
2本目は17世紀ヴェネツィア
今回、男を殺してしまったのは女自身でした。
そこにも冷笑する死神の姿が。
3本目は中国の宮中
空飛ぶ絨毯で遊ぶ男と女
今度はハッピーエンドを迎えることが出来るのか
またも男は
死神が放つ矢に倒れてしまいます。
”お前は男の生を救うことが出来なかった。諦めなさい”
と死神。
”最期のチャンスをもう一度だけお与えください”
と絶叫する女。
”よし、それほど言うのであれば1時間だけ猶予を与えよう。物語のなかでなく、この世で、お前の身の周りに居る誰でも良いから、一人の命を持ってこい”
女は村の年寄りに呼びかけます。
あなたの(残り少ないであろう)人生を譲ってくださいませんか?
誰にも相手にされません。
追い詰められた女は
産まれたばかりの赤子を死神に差し出そうとします。
”ほほう、その子の命を俺にくれるというのか?”
しかし女は踏みとどまります。
私はなんということを考えていたのだろうか・・・
子供を母親の許に戻します。
その瞬間、死神の表情が柔和になり
男と女は再び、手を取り合うことが出来たのでした。
行く先は、あの世
ですが。
いやあ、それにしても構成がパーフェクト
よく出来てるなあ実に。
山崎努と天本英世を足して2で割ったようなベルンハルトの存在感
一人4役で頑張る男(ヴァルター・ヤンセン)と女(リル・ダゴファー)
特撮シーンも随所に散りばめられて効果をあげています。
時代&場所の設定が異なる3話とも
大掛かりなセットが組まれていて、スケール感があります。
タイトルからして重苦しい感じを受けてしまいますが
お茶目な会話や追っかけシーンもあって、
実は上質のエンターテイメント映画なんですよね。
(後年のラングの有名作 ”M” ”メトロポリス” ”ドクトル・マブゼ” よりずっと観易い)
惜しむらくは字幕が頻繁に入ってくることなんですが
映像だけでも充分楽しめます。
ともかく、基本ですね
映画の。
玉手箱とも言えるかな?
まさに殿堂入りの逸品です。
Der müde Tod Trailer