バンコクマインド

タイの過去現在未来と音楽映画書籍の旅

書籍

人間と異形の生物が一緒に暮らす街、愉快なオフビート漫画 ”栞と紙魚子”

天才、偉人、空前絶後の漫画家 諸星大二郎のホラー・コメディ。 少女誌への連載ということで 私はリアルタイムでは読んだことはなかったのですが (1995年から休載期間を挟みながら断続的に掲載) これは最高に楽しいシリーズですね。 舞台は東京近郊の…

暑さ寒さも彼岸まで、じゃない・・・ タイは灼熱エブリデイ

こちらはオックスフォード大学の教授 フランセス・アッシュクロフトの ”人間はどこまで耐えられるのか~LIFE AT THE EXTREMES”(2000) という著作。 人間はどのくらい 早く走れるのか 高く登れるのか 深く潜れるのか など、様々な観点から人間の身体の…

機関車も飛行機も動かなかった~KUROSAWAに立ちはだかったカルチャーショック

1965年に ”赤ひげ” を撮り終えた 黒澤明監督は、自らのプロダクションを設立し 海外進出を試みます。 (既に斜陽の時代を迎えていた日本の映画界では、黒澤の思うような作品は製作が困難になっていました) 幾つかの企画があったようですが ”暴走機関車”…

動物バンザイ 愛せる?愛せない?

動物好きな人って多いですよね。 ペットということでいえば 犬派、猫派に分かれたりとか。 最近は希少種を飼っている方も増えているようですね。 ちなみに私は一度も経験なし。 (縁日で買ったミドリガメとか金魚などは除いて) ところが妹は大の動物好き。 …

傑作?超駄作? 音楽評論って難しいのね・・・“M.I.U” by The Beach Boys

毎月発表される新作~ 音楽にしても映画にしても書籍にしても とても全部は聴けない、観れない、読めないわけで そういう際には各方面の評価~レビューが参考になりますよね。 さて、大御所 ザ・ビーチ・ボーイズが1978年に発表した ”M.I.U” というアル…

ながらでは出来ないなぎらさんのお仕事

テレビのタモリ倶楽部などで 飄々とした笑いを振りまいている なぎら健壱 本職のミュージシャンとしての活動以外にも 居酒屋、自転車、カメラ、音楽史(カントリー&ウェスタン、日本のフォーク) などについての博識ぶりが 生半可なお方ではありません。 私…

「街歩き」の日々よ、カムバック プリーズ!

不要不急の外出は控えるように とのお達しがありますんで どうしても部屋に籠りがちな日々。 ジャズ&映画評論家にして、名コラムニストの 植草甚一(1908~1979)の 著作を読んでいましたら 東京での ”街歩き” の日々を思い出しました。 古書店街の…

棺桶に入れてもらえるなら、この一枚・この一曲・この一冊

よくありますよね。 「無人島に持っていく10冊の本」 「人生の最後に聴きたい音楽作品」 とか。 もし一つしか選べない 洋楽/邦楽/外国(翻訳)文学/日本文学 それぞれのジャンルで、 という厳しい設定にしたら 自分の場合はどうかしらん。 洋楽ならこれ…

田中絹代とうな丼

昭和の大女優 田中絹代の生涯を追った ”小説 田中絹代”(新藤兼人著) のなかに、面白い記述があります。 絹代はともかく大のうなぎ好き。 身体の調子が悪くなったりすると、とにかく うなぎ(うな丼)を食べれば治るという 思い込みというか、ある種の信念…

”三人の妻への手紙”&”妻への三通の告白”~ハッピーそれともバッドエンド?

”三人の妻への手紙”~A LETTER TO THREE WIVES ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督の1949年作品。 アメリカ東部、郊外の町で暮らす三人の主婦。 ある土曜日に学校の課外活動ボランティアをするために 集まります。 そこへ一通の手紙が。 あなた達の誰か…

小百合とサユリ

サユリスト と呼ばれている人たちが居ます。 女優、吉永小百合の熱狂的なファンの方々。 年齢でいえば団塊の世代&もうちょい上にあたる 現在では70代中頃~のお歳でしょうか。 (後追いの世代は別にして) ”小百合ちゃん”(中平まみ著・講談社)は 吉永主…

被爆の恐怖を丁寧に記録する~新藤兼人監督の ”第五福竜丸”

新藤監督の1959年作品。 1954年のビキニ環礁における アメリカ軍の水爆実験で被爆した船員たちを描いた、 セミドキュメンタリーともいえる内容です。 マグロ漁船の第五福竜丸 家族に見守られて静岡県の焼津港から 出航します。 マグロの群れがなかな…

気がついたらバンコクの古本屋で10冊、買っていた

いやあ、もう無意識というか いつのまにか。 ラインアップが良い時あるんですよ。 当たりの日。 日本に帰る方が多い季節ですからね、 手放す人が多いのかも。 値付けも大盤振る舞い。 よいのかしらん、というくらい。 (単行本で20バーツ~70円ほど。ア…

成瀬巳喜男と高峰秀子~監督と女優の共同作業の頂点 ”乱れる”

これは凄い。 女優さんの演技ということでは 多分、日本映画で一番ではないかなと。 (あと、”西鶴一代女” の田中絹代も) いや、別に大声で叫んだりとか そういう方向ではなくて。 1964年の成瀬巳喜男作品 主演が高峰秀子、共演陣が加山雄三 草笛光子、…

奇子の辿る数奇な昭和史~すっきりしない読後感の”ダーク手塚”代表作

こちらは1972~73年に 青年誌に連載された”奇子(あやこ)” 手塚治虫作品のなかでも異色作のひとつ。 まずいきなり 近親相姦、家族間での殺人や地下牢への軟禁 など描写が陰惨です。 手塚作品の特徴である「シリアスな場面でもユーモアが感じられる」 …

ぐだぐだ、日々の読書ログ

エンブリオ/帚木蓬生 これは乱暴に言うと 21世紀版 ”白い巨塔” ですかね。 主人公の医師は先端医療のパイオニア、 財前五郎のように出世欲ギラギラだったり 患者や周囲に帝王のごとく振舞うというタイプではないのですが 邪魔になる人間を躊躇なく排除す…

メコンと鼠とゴキブリと~BANGKOK LATE 1980s

鴨志田穣という作家が居ました。 一時結婚していた漫画家の西原理恵子と かなりの数の共著があります。 個人名義の作品としては 自身のアルコール依存症の体験がベースになっている ”酔いがさめたら、うちに帰ろう” がよく知られているところ。 鴨志田と西原…

香川京子の体当たり演技がスクリーンに爆発~”猫と庄造と二人のをんな”

香川京子というと 清楚で上品でおしとやかな・・・ というイメージが一般的だと思うのですが この作品では爆発&炎上しています。 狂騒的ともいえるほど。 監督は前年(1955年)に ”夫婦善哉” を製作した豊田四郎。 今回の主役も引き続き森繁久彌です。 …

アフリカ~渥美清~いかりや長介

当時としては画期的な アフリカロケを敢行した 羽仁進監督の1965年作品 ”ブアナ・トシの歌” 主演は後に寅さんシリーズで国民的俳優になる 渥美清です。 渥美清の役柄は 日本人研究者のためにプレハブ住居を建設する技術者。 現地の住民に協力を求めます…

信じることと祈ること

私には特定の宗教への信仰心がありません。 墓参りをしたり タイの友人たちと寺院に行った際に 手を合わせることはします。 その際に心の中で思うこともあるのですが それは信仰と呼べるようなものではないでしょう。 宗教、そしてそれを信じるという行為は …

目覚めると、そこは命を賭けた闘いの空間だった・・・映画や小説世界から

2000年代に大ヒットした "SAW~ソウ" シリーズ ハマった人も多いのではないでしょうか。 低予算を逆手に取った 密室閉塞空間でのゼロサムファイト。 www.youtube.com 最近もまだ続編が作られているようですね、 私はシリーズの3か4あたりで離脱してし…

”世界で唯一の、私の場所” って何処だろう?

パラパラと古い雑誌をめくっていました。 ”旅行人” というタイトルです。 発行人はトラベルライターとして有名な方で 多くの単行本も書かれています。 20~30代の頃、 私もよく読んでいました。 池袋のジュンク堂や神保町のアジア文庫で買い求めて、 次…

”黒い雨” ”海と毒薬” 原作と映画が高評価の二作品

井伏鱒二の「黒い雨」 遠藤周作の「海と毒薬」 戦後の日本文学を代表する作品としてあまりにも有名ですね。 この2冊には *太平洋戦争(で起きた事項)がテーマとなっている *回想形式を取っている という共通項がありますが、 映画化された際にも同様のポ…

50センチのウェストで繰り出すダンスはアスリート級~アステアも認めたヴェラ=エレン

アメリカはオハイオ州出身の女優さん&ダンサー。 10代の時に既にブロードウェイの舞台に立ち 後に映画界に進出、 多くのスターと共演を果たします。 小柄で細身の人ですが よく見るとウェストが細すぎません? ジーン・ケリー他と共演した”踊る大紐育”(…

昔の映画は ”古い” のか? 1952年製作の ”現代人”

友人と映画の話をしていると ”ねえ、あなたいくつ? あなたの言ってる映画って50年前とか下手すると100年前だったりするじゃない。一世紀よ、一世紀前ってもう歴史上というか昔すぎてイメージ湧かないわ” なんてよく呆れられるんですね。 なので、 *私…

本当の宝物は少しでいいんだ~つげ義春の1967年~1968年

私はリアルタイムでは つげ義春の作品の数々に出逢っていません。 かの ”ねじ式” が1968年、 まだ幼稚園ですからいかにも無理。 (そもそも、つげ義春が好きな幼稚園児って変ですよね。 ディズニーとかぐりとぐら、きかんしゃやえもん、ならともかく) …

綿密な取材&圧倒的な構成力に唸る ”アドルフに告ぐ”~by 手塚治虫

手塚治虫の後期の代表作に挙げられる大作 ”アドルフに告ぐ” 史実と手塚のイマジネーションが融合した まさに傑作。 決して手塚治虫の大ファン、というわけではない私が ぐいぐいと物語に惹き込まれて 頁をめくる手が止まらなくなりましたから。 未読の方が居…

FRIDA KAHLO~フリーダ・カーロについての記憶の断片

バンコクの古本屋で フリーダ・カーロの生涯を追った書籍を買いました。 (フリーダ・カーロ~引き裂かれた自画像/堀尾真紀子著/中公文庫) フリーダに関する書籍や映像作品は数多く作られていますので その波乱に満ちた一生~47年間と決して長くはないの…

セリフのオーケストラ~名優、仲代達矢の凄さは「声」にある

仲代達矢というと 一連の黒澤作品、 なかでも後期の ”乱” ”影武者” あたりが 世界的にも、もっともよく知られた 代表作でしょうか。 私は日本の名優を一人挙げるとするならば この人だと思うのですが それは視覚的な立ち振る舞いに加えて 「声」の魅力が圧倒…

その角を曲がると異世界に行ってしまう~諸星大二郎の漫画宇宙

漫画界の巨匠、諸星大二郎の 短編作品をいくつか。 時代設定は古代~現代から未来へと 自由にワープします。 頁をめくるだけで 惑星旅行や時間遊泳を楽しむことが出来ますよ。 ”楽しい”というより 恐ろしくて、悲しくて 淋しいことも多いかもしれませんが。 …